囚われのシンデレラーafter storyー
カフェオレのカップを口にして顔を隠しているつもりになりながら、背中を伸ばす。
颯爽と歩いて行く姿は、まさに仕事中の男の人の顔。
オンの西園寺さんも、本当に素敵――。
離れて行く姿を追うように身を乗り出す私は、かなり怪しい人だ。
その背中を惜しむように見ていると、並んで歩く二人が立ち止まる。
あ――。
勝手に盗み見して、勝手に胸がチクリと痛む。
隣にいた女性が背伸びするようにして西園寺さんに何かを耳打ちする横顔がこちらから見えて。その女性の身長に合わせるように西園寺さんが少し身を屈めた。
その姿に、胸の奥が刺激される。
小柄なその女性の横顔がこの目に焼き付く。見てはいけないものを見てしまったような。心のざわめきに、落ち着けと必死に自分に言い聞かせる。
色白の頬が、少し赤いように見えたのは気のせいだろうか。西園寺さんを見つめる目が、どこか必死で何かを想うものに見えるのは考え過ぎだろうか。
もしかして、西園寺さんのこと――。
こういう、ただたまたま目にしただけの光景に感じる同性ゆえの直感のようなものって、一体何なのだろう。
何の根拠もないのに、勝手に心はざわついて、勝手に心臓がドクドクと騒ぐ。
広い背中の後姿が見えるだけで西園寺さんの表情は分からない。だから余計に、彼女の横顔がくっきりと鮮明に静止画として記憶された。
この時ばかりは、自分の視力の良さを恨んでしまいそうになる。
その女性の見た目から、多分、私より少し年下くらい。おそらく、部下だ。そう、西園寺さんの部下。仕事なのだから、部下が近くにいるのも当然のこと。
もちろん、西園寺さんに対する不安なんて一ミリもない。それくらいに深く愛してもらえていると思っている。
なのにどうしてなんだろう。
少しだけ、ここに来たことを後悔している自分がいる。
想像しているだけなのと、実際の映像を見てしまうことの違いの大きさに、帰国を前にして余計にこの心はざわざわが止まらなくて。
本当に、どうかしている。