囚われのシンデレラーafter storyー




あの女性が西園寺さんのことを好きだとして――。

西園寺さんの元で働いている人がそいういう気持ちになっても、全然不思議じゃないといつも思っている。

その気持ちがいつしか膨らみ大きくなって、何かをきっかけに、彼女がその気持ちを伝えたいと思う日が来たら――。

そういう状況は、二人きりの時に起こるもの。西園寺さんが、他の女性と二人きりになっている様子を想像してしまう。

見たこともないオフィスが想像されて頭に浮かんで、夜の薄暗い中で、あの人と向き合って――。

その映像を吹き消すように頭を横に振った。

本当に、ばかばかしい。

いい年して、ただ一瞬目にした光景を元に連想ゲームをして。
大人なのに、みっともない。
そんな幼稚な自分に溜息を吐く。

「……あずさ、どうした?」
「え……っ」

真正面に座る西園寺さんが私をじっと見ている。

「食事、全然進んでないみたいだけど。それに、なんとなく、元気がないような気もする」
「あ、あの……」
「ん?」

――あの人は、いつも西園寺さんの近くにいる人なんでしょうか。あなたに、恋していたりしませんか……。

その問いかけを呑み込む。

パリに着いた日、私は西園寺さんに聞いたのだ。そうしたら、はっきりと答えてくれた。

『俺にとって同僚は同僚でしかないから。仕事から離れてしまえば、個人的に付き合おうとは思わない。そういう気にもならない。ただ、丁重に断るだけだ』

それなのに、同じことばかりを聞くのは、まるで信用していないみたいだ。こんなに愛してもらえているのに、これ以上何を求めるというのだろう。

「――ううん。元気ですよ。ただ、帰国の日が近付いて、少し寂しいの」
「ああ……そうか。それは俺も同じだ」

手にしていたフォークとナイフを置いて、西園寺さんがふっと息を吐く。

「ここ数日、家に帰ればあずさがいて、美味しい食事を一緒に食べられて。あずさが帰った後、落差に耐えられるかな」

苦笑する西園寺さんを見つめる。

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