囚われのシンデレラーafter storyー
「……あずさ、今日は、どうしたんだ?」
西園寺さんの身体の上に載り、私からそのボタンを外し、厚い胸板に指を滑らせ舌を這わせる。
大きな手のひらが私の頭に触れて止めようとするけれど、その力は弱い。
「――あずさ……ぁっ」
乱れた吐息にまみれた、掠れた声――。
西園寺さんの言葉を無視して、下へ下へと向かう。
「ま、待てっ、本当に、いいから……っ」
「私からされるのは、嫌ですか? こんなことする私は、軽蔑する?」
パジャマの上着のボタンをすべて外し、前を開いて。滑り落ちて行く舌先で、臍の窪みを通って。
そして、決して自ら触れたことのない場所に触れる。
「あずさ――っ?」
一際、鋭い声が飛んで来た。
自らこんなことをするのは初めてだ。
西園寺さんのような人は、こんなことをする女は嫌いかもしれない。はしたない女だと思われるかもしれない。
そう思うのに、止められない。
私で感じて欲しい。私に溺れて欲しい。
そして、その快感を西園寺さんの記憶に深く刻みつけたい――。
上手く出来ているのか分からない。
とにかく私は必死だった。
「……あずさは、そんなこと、しなくていい。だめだ、そんなことしたら――」
これでいいのか。ちゃんと、気持ちよくさせることが出来ているのか。
まるでわからない。
「あずさ……、あずさっ」
上半身を起こし、西園寺さんが私の肩に手を置く。その長い脚の間でうずくまる私を引き剥がそうとしする。
「もう、離すんだ――」
強く腕を掴まれると、そのままベッドに押し倒された。
「ご、ごめんなさい、やっぱり嫌でしたよね……」
見下ろしているその目がどこか怒っているようにも見えて。自分でも信じられないくらい大胆なことをしておきながら、今更怯える。
「こんなことして、ごめんなさい――」
「違う、そうじゃない。あずさのあんな姿を見たら、すぐにイッてしまうだろ。大変なことになるところだった」
「佳孝さん……」
「……狂っておかしくなって、正気に戻れなくなる。それに、イクなら、あずさの中がいい」
そう言うと、西園寺さんが性急に私の着ているものを剥いでいく。
「……じゃあ、あんな私でも、嫌いに、ならない?」
「バカなことを言うな。あずさなら、どんな姿を見たって嫌いになるはずないだろ」
「あ……っ」
引き剥がされた先から、熱い手のひらが私を激しく愛撫して。
「俺の前でなら、どんなに淫らになっても構わない。どんなあずさも、全部可愛い。何をしても、愛おしい」
私の肌を貪り激しさをぶつけて来る。
「だから、俺には、あずさの全部を見せてくれ。躊躇わないで、心も、身体も、全部――」
彼自身が私の身体の中心をいっぱいにして。
熱くて熱くて、私を溶かそうとする。
なら、私の弱く醜い心を見せてもいいだろうか――。
「……私が帰っても、思い出して。今日の私を、思い出して」
律動を繰り返す西園寺さんの身体にしがみつく。
「あずさのあんな姿、頭から消えるわけない。いつだって思い出して、思い浮かべる」
「私だけを、見て。他の誰も見ないで。私だけ……あっ!」
「クソ……っ。なんて表紙してるんだ」
私を隙間なく埋め尽くしてくれる?
「このまま抱きしめていたい。離したくない」
お願いだから、時間、止まって――。
不可能なことを真剣に願ってしまう。
「あずさしか見えない。あずさだけだ……っ」
熱に浮かされたような言葉とキスを、交互に繰り返す。
二人で一緒にとろとろに溶け合って、一つになってしまえたらどんなにいいだろう――。