囚われのシンデレラーafter storyー

「次に会える日まで消えないように、私に佳孝さんを刻みつけて」

私の奥深くまで一杯にして、そのカタチを覚えさせるように何度も何度も打ち付けながら、西園寺さんの唇が肌に赤い痕を散らしていく。

「……ああ。あずさも、俺に、消えないように痕をつけてくれ」
「ん――」

必死に、その汗ばんだ肌に吸い付く。

「あなたを、縛り付けられればいいのに……」
「いいよ。どれだけ縛り付けたって構わない。俺だって――」

――永遠にあずさを俺に縛り付けられるのなら、何だってするさ。

恐ろしいほどに艶かしい西園寺さんの喘ぐ吐息と共に吐かれた言葉が、私を震わせる。

夢中になって、お互いに、その身体の至るところに痕をつけ合った。



 深くなった夜の空で、月が柔らかな丸い光を放つ。

「――本当に、今日のあずさには驚かされた。俺を殺す気か?」

西園寺さんが、少し笑って甘く囁く。
何も身に着けていない身体で、少しずつ整い始めたお互いの呼吸を感じながら身を寄せ合う。
愛おしそうに私の髪を撫でながら、とびきり優しくなった声で西園寺さんが私に問い掛けた。

「何か、あったのか?」
「どうして……? 私があんなことをするなんて思わなかった?」

私をくるむ肌。西園寺さんのつるりとした肌は、触れるだけで気持ちよくて。私の心をも溶かしてくれる。

「佳孝さんの思う私は、どんな女なんだろう」
「――どんなもこんなもない。あずさはあずさだ」

西園寺さん――。

その言葉が、少しだけひりひりとしていた心を包み癒して。甘えたい気持ちを引き出すのだ。

「実は、どんな手を使っても縋りたいなんて考えていても? 醜いことを考えていても? 結構、狡くて卑怯でも?」

そう言うと、西園寺さんが笑った。

「ああ。だって、それもあずさなんだろう? いいよ、別に」
「佳孝さんが思っているような、強くて純粋な私じゃなくても……?」
「あずさ――」

肩を掴んで、私の顔を覗き込ん出来た。

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