囚われのシンデレラーafter storyー
2 幸せな逢瀬
コンクール関連行事も終わり、ゆっくり母と電話で話をすることが出来た。
コンクール直後に報告はしたけれど、あれこれと慌ただしくて、ほとんど話せていなかった。
(改めて、本当におめでとう! お母さん、パソコンの前で叫んじゃって。お隣さんに迷惑だったかも!)
理由は違えど、私と同じようなことをした人がここにも――。
「本当に、無事に本選まで残れてホッとしてる」
もちろん嬉しい。
でも、『ホッとしている』という気持ちが一番近い気がする。
(何よ、意外に冷静ね)
「そんなことないんだよ? むしろ、あまりにこの二年必死だったから、心からホッとしてるの」
今では体調に問題ないとは言え、持病を抱えた母を日本においてまでモスクワなんて遠いところに留学して。
そうまでして、すべてをここにかけていた。
私が求めていたのは結果だ。結果を出さなければ意味がない。
そう自分を追い込んでいた。
(本当にあずさは頑張ったんだね)
母が、今度はしみじみとそう口にした。
「お母さんにも、たくさん迷惑かけたしね」
(迷惑なんて全然かけられてないよ。本当に申し訳ないくらい私は何もしてない。それより、全部、西園寺さんのおかげでしょう? 感謝しなくちゃね)
母から西園寺さんの名前が出て、一瞬言葉に詰まる。
お母さんも西園寺さんのことは気にしているのは間違いない。
きちんとお母さんにも報告しよう。
「実はね。本選の日、西園寺さんが会場に来てくれていたの」
(……え? 本当に?)
耳元で大きな声が聞こえて、思わずスマホを耳から離した。
「うん」
(じゃあ、会えたのね?)
「詳しいことは、今度、帰った時にゆっくり話す」
どうせ、もう学校は夏休みに入る。今年もまた帰国する予定だ。
(ほんとよ? ああ、どうしよう。お母さんまでドキドキして来た。西園寺さん、まだあなたのこと想っていてくれたってことよね? どんな感じだった? 変わっていなかった――)
「――ごめん、その話はまたゆっくり」
帰ったらゆっくり話すと言っているのに、あれやこれやと聞いて来ようとする母を遮った。