春の欠片が雪に降る
関わりたくなさすぎた人物の名前が出て、ほのりは内心ひどく驚いた。
「吉川さん、よろしくお願いします、木下和希です。僕、まだ二年目で今までは大体瀬古さんと動いてたんですけど」
隣に立つ木下が、自身の隣に立つ大柄な男性を指して微笑む。
ガタイのいい、角刈りの男性だ。
(二十四歳か……なんて恐ろしい)
若いのだとは思っていたが、予想を上回る年の差だった。改めてあの夜の失態を悔やんでしまう。
「瀬古です。営業は俺と木下、あともう一人山内の三人しかおらんので」
「はい」
「関東と違って人少ないから、まあサッサと仕事覚えて一人で動けるようにしてや」
こちらは中田とは違った意味での冷たさを感じる。刺々しい雰囲気が歓迎の意を全く感じさせない。木下に負けない長身にガタイの良さ、そしてこの威圧感。
(ま、色んな人がいるし、こんなもんだよなぁ)
ほのりは静かに自分を納得させつつ、
「わかりました、ご迷惑をかけるかと思いますがご指導よろしくお願いします」
と、これまた定型文を用いて軽く頭を下げる。
ところが一瞬かち合った目は、あからさまにすぐ避けられてしまった。