春の欠片が雪に降る
「じゃあ具体的にはどんな感じになるんでしょう」
ほのりも流石に黙ったままは良くないと、会話に参加した。
「うち、営業事務はいないんだよ。営業が自分で入力作業やってるから」
「そうみたいですね、向こうで少しは聞いていました」
「だから、基本的にお願いしてたのは一般事務。伝票整理とファイリング、小口関係は経理に提出するまでをやってもらっていた。あとは請求書関連。月次の数字合わないってなったら俺に回ってきてたし」
そこまで、うんうんと頷きながら聞いていたほのりだったが次の言葉でカチンときてしまった。
「ま、そこまでやること多くはないから楽でしょ」
「楽……」
「そう。なのにすぐ辞めていくから、困る」
中田はヤレヤレといった様子で肩をすくめた。
(瀬古といい、このおっさんといい……)
関東では、受発注業務の他に担当営業の顧客ごとに請求書の発行までは携わっていたので全くわからないわけではないが。
それでも。
「楽ではないと思いますけど」
「ん?」
中田は首を傾げた。
「関東とは事務の人数が違うから、この環境で支店長が事務の仕事を楽でしょ、なんて切り捨てたら彼女には味方がいなかったんじゃないですか」