春の欠片が雪に降る
「はい?」
訝しく思う気持ちが声に漏れ出ていたように思う。
ひとりで酒とおつまみに夢中な女に何の用があるというのか。
見上げた視線の先には、ほのりよりも少し……いや、かなり年下だろう男性が、イスの背もたれ部分に手をかけて微笑んだ。
くっきりとした二重の目。それを柔らかそうな髪が少しだけ覆う。
毛先に動きがあるそれは、パーマなんだろうかくせっ毛なんだろうか。どこか小動物のふわふわな毛並みを連想させ触ってみたい衝動に駆られる。けれどそれはまずい。
若い男の子にベタベタ触れるなど、会社にいなくともセクハラ認定だ。
……気をつけなければ。
(しっかしまぁ、髪もだけど、可愛い顔してるなぁ)
ほのりと目を合わせる為にかなり背中を折り曲げている。背が高そうだけれど、童顔といえばいいのか。大きく形のいい瞳とふわふわの髪の毛のせいで、あえて形容するなら”可愛い”のだ。
つい見とれてしまったのはどうしてだろう……などと己に問いかけるまでもない。
可愛い男の子は大好きだ。