春の欠片が雪に降る



「キレイな女の人がひとりでおるなぁって、まわりみんな気にしてチラチラ見てますよ」
「あはは、それはどうもありがとう」

 しかし残念。
 言動はちっとも可愛くなかった。

 それにしても何の必要があっての褒めの言葉なのか。
 曖昧に笑うと彼は薄暗い店内の淡いライトを逆光にして笑みを深めていく

「まぁ、それゆうたら俺もなんやけどね」
「ありがと」

 再びそっけなくお礼だけ返すと、可愛い顔は困ったように苦笑した。

「あ〜、あはは、アカン感じ?」
「何が?」
「何がって、ナンパしてんねやけど」

 思わず面食らう。
 そんなことは長らく経験していなかったし、ここ最近は押しすぎて引かれることばかりの婚活の日々だったから。

 別に分別つかなくなるほどに酔ってなんかない。これは、きっとあんまり真面目な流れじゃないなって判断はできていたけれど。

「それならもっとわかりやすく言ってよ」

 なんて、口走ったことに自分がビックリ。
 きっと少し嬉しいと思う気持ちがここまで来ても出てしまったんだろう。

 どうにでもなってしまえと、頭の中で弱い自分が囁いてしまった、ような……気がしていた。

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