春の欠片が雪に降る
「いっつもラーメンやらチャーハンやら大盛りでしょ。今日は可愛い量じゃない?」
「あー、ほんまっすね。まあええんですよ、吉川さんと一緒のとこ入りたかったし」
(……そうでございますか)
可愛くない量を食べる木下の本日のランチは、見渡す限り女性ばかりのイタリアンカフェだ。
客層が客層なので、ランチセットの量も中華セット大盛りに比べるとやはりボリュームダウンしてあるだろう。
それを気遣ったなら、含みを持たせるでもなくさらりと木下は言ったのだ。
さらには、そんなセリフを吐いておいてまわりの熱い視線や、かっこいい、この辺のビルで働いてる人かな? なんてコソコソと話す声には気が付いていないのか?
「居心地悪くない?」
「え、うまいっすよ」
腹減ったらまたなんか食いますわ、と笑う木下に、いや聞いたのはそれじゃないのよ、と突っ込みたくなる。
「めちゃくちゃ見られてるの、嫌じゃないの?」
「あー」
さすがに、刺さる熱い視線には気がついていたのか困ったように笑うけれど。
「別に知らん人から顔褒められても、面倒ですし」
(なるほどな)