春の欠片が雪に降る





***





「……ん」


 シーツの肌触りは自宅のものより固め。
 最初は冷たく感じたけれど、もうとっくに暖かくなって肌に馴染み出した。

「なんでなん、今更隠すん?」

 久しぶりの行為は、こんな歳でも恥ずかしいらしい。頬に熱を持っているような気がするから、先に部屋を暗くしておいてよかった。
 しかし安堵する間もなく、あれよあれよと着衣を乱され脱がされて、ほのりが身じろぐと耳元で吐息混じりの声が拗ねたように囁いた。

「暗くされてよう見えんのやから、隠すんアカンって」

 暖かく湿った感触に背筋がぞくりと波打つ。

「だ、だって……ジッと見るから」

 ついさっき、出会って一緒にお酒を飲んで、ほんの少し会話をしただけの相手。
 隣に座り、いつのまにか指を絡ませ手に触れられたり”綺麗やね”っておだてる言葉にいい気になって。

(何やってんだろ、私)

 冷静な自分は確かに存在しているのに。

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