春の欠片が雪に降る



 通話を終えて追いついてきたのだろうが、開口一番とんでもないことを言う。

「どこをどう見てそうなるのよ」

「……二人、引っ付きすぎちゃいますか?」

 そんなことを言い出してしまったなら、木下の距離感こそどうか。

(いっつも近いの木下くんだからね!?)

 と、出かけた声は喉にとどめた。
 言ってしまってどうする。
 そこから先の会話を全く思いつけないのだから余計なことは言わないに限る。

「おう、お前も戻ったんか! 吉川な、精算忘れとったん何とかしてくれるゆてよ、本社に直接電話してくれよって」

「へー、マジっすか。よかったですね、瀬古さん。これで奥さんに怒られませんね」

(え?)

 そやそや、と頷く瀬古を前にほのりは固まる。

「ちょ、ちょっと待って瀬古さんて結婚してんの!?」

 ほのりが叫んだなら、瀬古は不思議そうに瞬きをして「それがどないしてん」と首を傾げる。

(……こんな、めんどくさ……いや、個性的な人間でも結婚できるのか! じゃあ私ってさらにヤバいってわけか!)
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