春の欠片が雪に降る
話したいこと
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「いやぁ、ええなぁ。木下くんもなかなかおもろい奴やけど、あんた、ええわぁ」
「……え、あ、はい」
(いや、おかしい)
ほのりは、ガヤガヤと騒がしい店内を見渡した。が、あいにく個室。
雑音は壁に隔てられていて、その様子を実際に目にはできない。
「やっぱ女の子来てくれるとこの方がええわ
、どうせおんなじ金使うんやったらなぁ」
「え、あ、はい」
語彙を失ったほのりが、マヌケな返答をしている間にも目の前に座る男性は上機嫌な様子で笑顔を絶やすことなく、ほのりのグラスにビールを注ぐ。
(……いつ帰れば正解なんだ?)
午後から向かった取引先では、まだまだ慣れないプレゼンをぎこちなくこなした。とはいえ、追加機能をアピールするものなので、新規開拓を任されている瀬古や木下と比べれば内容はとても優しいものだ。