春の欠片が雪に降る
甘い声を囁く唇が、時に獣のように噛み付き、かと思えば優しく、緩急激しく太ももの内側に何度もキスを落とす。
大きな手のひらが膝を包み込むように持ち上げ、妖しく光る瞳は、もう随分と誰の目にも触れさせてはいなかった部分を見つめた。
「恥ずかしいことばっか言わないで」
思わず顔を手で覆った。
この行為を当たり前みたいにする空気。
置いていかれないよう意地になって、緊張と迷いを隠しながら強がりな声を紡ぐ。
「はは、おもろいっすね。恥ずかしいことしようやって時に何ゆうてんの」
ほのりの顔を見て、軽く笑い飛ばしてから、彼は――声をかけられた店でカズキと名乗った男性は、目を細めその表情から笑顔を消した。
これから抱こうって女への優しさとか、愛情とか、もちろんそんなものは一切見つけられない。
欲情に揺れる瞳。
それでも。
「ほんまキレイねやね、お姉さんの身体」
甘く安い台詞に満たされてしまう。
「……っ、あ」
覆い被さる、自分の身体よりも大きく、逞しい重み。
肌の暖かさに込み上げてくる何か。
シーツの中に沈められてく理性。
それでも、どこかで溺れきれない。
与えられる快感の中、思考が鮮明なのは苦しい。