春の欠片が雪に降る




(なるほどなぁ、これ、事が終わったら間違いなく一夜の過ち的な……)

 「何考えてるん」

 ほのりを見るカズキと名乗る男は、ふわふわとしたブラウンの髪を汗で濡らしながら目を細くして微笑んだ。
 聞かないのがルールじゃないの? と、返したかった言葉は深いキスに飲み込まれてしまう。

 彼の童顔からは想像できなかった、細身で、しかし筋肉質な鍛えられた身体には思わず触れたくなるし、力強い愛撫は的確にほのりの興奮を増幅させている。

 冷えた頭の中とは分離されているかのよう。
 口元を押さえる余裕をなくしてしまったほのりの甲高い声がホテルの室内に響き渡った。
 互いの息づかいだとか、彼が動くたびに軋むベッドの音や、シーツが擦れる音。

 もう二度と会わないだろう人に、アルコールよりも酔わされているじゃないか。

 (でも、もういいや……今、いろいろ忘れたい)

 絶え絶えになる呼吸の合間。
 快感に身を任せることに決めて、迎えた絶頂の中、目を閉じた。

 
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