竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
働いて少しはお金が貯まっていたところだったけど、あれはどうなっちゃうのかな? せっかく一生懸命働いたのにもったいない。そんなことを考えていると、竜王様が顎に小さな手を当てて「ふむ」と呟いた。
『この王宮には、保育が必要な子供や赤子がいないからな……。それに、いたとしても竜人以外に自分の子供を預けないだろう。残るは学校の教師だが……』
「うっ……せめて、字が読めれば良かったのですが」
『それが問題だろうな』
そうだよね。この階級意識がはっきりしている貴族社会で、私が竜人の子供に関われることはないだろう。子供好きだから、保育の仕事ができないのは悲しいけど、しょうがない。
(はあ、でも落ち込むな〜……)
頭では理解できても、心がついていかない。自然と気持ちが落ち込み、うつむいてしまった。するとそんな様子を見た竜王様が、私の肩にぴょんと飛び乗ってきた。
『それでも、この国でリコがしたいことができるよう、考えていくから安心しろ』
「……いいんですか?」
『ああ、おまえはもう、この国の国民だからな。俺がやらないといけないことだ』
この国の国民……。そっか。日本に帰れないなら、私はもうこの国の一人なんだよね。そうはっきり言われると、自分の居場所が決まったようで、心の奥がじんと温かくなった。