竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
『大丈夫だ。きっとリコのやりたい事は見つかる』
根拠はまったくなさそうだけど、竜王様が言うと、本当にそうなりそうな気になってくるから不思議だ。そんな私の気持ちが伝わったのか、満足そうに私のまわりをクルクル飛んでいる。
(ふふ。やっぱり竜の姿はかわいくて癒やされる!)
ようやく張り詰めていた気持ちがラクになって、私はぬるくなってしまったお茶を一口飲んだ。
『ああ、そのお茶、気に入ったんだな』
「はい、このリュディカというお茶、大好きです!」
『ふっ……そうか。それなら良かった。今日はいろいろあって、もう眠いだろう。ゆっくりするといい』
そう言うと、竜王様は窓に向かって飛び始めた。
「はい! じゃあ竜王様、おやすみなさい!」
『…………だ』
「え? うわっ」
窓を開けたのだろう。突風が入ってきて、自分の髪の毛が顔にかかった。それに竜王様が何か言ったみたいだけど、風の音で聞き取れない。
「リュディカだ」
「え? お茶がどうかしましたか?」
ボサボサになった髪をかきあげ、顔をあげる。しかしそこに、さっきまで見ていた小さな竜はいない。
目の前に立っていたのは、人間の姿に戻った竜王様だった。