竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


「はあ……落ち着け、落ち着け〜」


 ドキドキはしてるけど、これは断じて恋じゃない。例えばイケメン俳優に一対一で見つめられたら、きっと同じように緊張してしまうはず。それと一緒だから!


 それにあの優しさは、私の生い立ちへの同情心からだ。どこかで見たことがあるあの表情は、捨てられたかわいそうな子犬を見ているのと同じもの。


 私が半ば自分に言い聞かせるようにそう考えていると、このドキドキのきっかけになった「リュディカ」が目に入った。もうほとんど飲み終わっているけど、カップの底にはあの黄金色の液体がゆらゆらと輝いている。


「片付けて、もう寝よう……」


 ぼうっとしていると、また動悸が激しくなりそう。私はさっさとティーセットを片付け、夜着に着替えると、ベッドに横たわった。
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