竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「それでは、私はすぐにお医者様を呼んできますから」
そう言ってリディアさんは、急ぎ足で部屋を出て行った。しんと静まり返った部屋で、私は一人大きく息を吸い、心を落ち着ける。そして自分のお腹に手を当て、そっと「竜王の卵」に話しかけた。
「りゅ、竜王の卵さん……?」
『はい! ママ!』
元気な声とともに、ポコッとお腹が膨らんだ。お腹にそえていた手にも、下から押し上げてくる感覚が伝わってきて、胸がドキッと跳ね上がる。
(声だけなら幻聴だけど、この手の感覚は現実よね……)
信じたくないけれど、これってやっぱり私が「運命の花嫁」に選ばれたってこと? 竜王様と結婚して子供を産む、ただ一人の女性。この国で女性の頂点にあたるお妃様。それが私だなんて到底思えない。