竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「いやいや、申し訳ない。しかしあなた様はここに突然現れたでしょう? あちらの世界で恋人か夫がいらっしゃって、妊娠している可能性があったら、数カ月は体調を気にしておいたほうが良いと思いまして」
「おい、そんな可能性、あるわけないだろう」
「竜王様、これは問診です」
リディアさんがピシャリと言い返すと、なぜか竜王様は不愉快そうな顔で天井を睨んでいる。腕を組み、指をトントンと動かしては、苛立ちを抑えているようだ。
(私だって彼氏くらいいましたよ! と言いたいところだけど、あんな環境でできるわけがない。むしろ私にとっての愛しい男は渋沢栄一だ。学校に入るため、夜な夜な彼の顔ばかり見ていたのだから)
しかしそんな馬鹿なことを考えているうちに、竜王様の機嫌はどんどん悪くなっていく。