竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「リコに恋人がいたのか? そいつはどこの――」
「竜王様、威嚇しないでくださいませ。お医者様の体にさわります」
「チッ」
その言葉にハッとしてお医者様を見ると、たしかに苦しそうに冷や汗をかいている。たぶん竜王様から竜気というものが出ていて、それで苦しんでいるのかもしれない。その様子にぼうっと見ている場合じゃないと思い直し、私は勢いよく手を上げ、話し始めた。
「はい! 私は今まで男性とお付き合いしてませんし、妊娠の可能性はこれっぽっちもありません!」
きっぱり宣言するように言うと、なぜか竜王様は「ふっ、当たり前だろう」と言ってニヤリと笑った。なぜあなたがそんなに満足気に笑っているのか……? 不思議に思って竜王様を見上げていると、お腹のほうから悲しそうな声が聞こえてきた。
『ぼくがお腹にいるのに……』
「ぐう……!」
(板挟み! 板挟みで苦しい……!)