竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


 子供の声は私にしか聞こえてないみたいだから、誰も気づいてない。しかしそのボソリと呟いた泣き出しそうな声は、私の心を確実にえぐってくる。


 お腹にいる竜王の卵は、それっきりまた黙ってしまった。私の言うことを聞いて大人しくしていると思うと、さらに胸が苦しい。


(はあ、どうしたらいいんだろう?)


 そのあともお医者様の健康診断は続き、何か不思議な道具でいろいろ調べられたが、すこぶる健康体ということがわかった。それでも気がかりなのは、さっきから何も話さない卵のこと。私がなぐさめるようにお腹をなでても、何も反応がない。


「リコ、どうした? お腹を押さえてるが、痛いのか?」
「い、いえ、その、何も食べてないので、お腹が鳴りそうで」


 ごまかすようにそう言うと、竜王様は「そうだったな。元気なら朝食を食べたほうがいいだろう」と笑った。リディアさんも「急いで用意しますね」と言って、健康診断が終わったのをきっかけに、三人はそのまま部屋を出て行った。
< 126 / 394 >

この作品をシェア

pagetop