竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


 パタンと扉が閉まった音が鳴ると同時に、私はお腹に向かって話しかける。


「……竜王の卵くん?」


 静かな部屋に私の声だけが響き、他には何も聞こえない。竜王の卵も何も反応せず、まるでさっきまでの声が幻聴だったように思えてくる。


「竜王の卵くん」


 もう一度お腹に向かって声をかけた。するとお腹がビクリと動いたかと思うと、聞こえてきたのはムニャムニャと寝ぼけた声だった。


『……ふわぁ〜、あれ? もうおわったの?』
「もしかして寝てたの?」
『えへへ』


 魂も寝るのか。私はガクッと肩を落とすと、そのままベッドに倒れ込み、枕に顔をうずめる。まあ、でも、落ち込んでいないのは良いことよね。だって自分は生まれる気満々なのに、母親(仮)の私が「妊娠の可能性はこれっぽっちもありません」と存在を否定したのだ。傷ついて当然だと思う。
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