竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
こんな状況で勘違いされたら、よけいに竜王の心象が悪くなる。自分を誘惑しようとしていたのか? なんて思われたら、絶対に無事ではいられない。そう思った私は、あわてて釈明し始めた。
「あ、あの、これは私が暮らしていたところでは、普通の服装で男性に取り入ろうとしているものでもありません! 職場の制服なんで、私が選んだ色でもありません!」
しかし私の言葉なんて、誰一人として聞いてくれない。それどころか口々に文句を言って止まらないみたいだ。私の必死の説明は、あっという間に彼らの声にかき消されてしまった。
「静かにしろ」
竜王のその一言で、また場がしんと静まり返る。そしてそのまま一歩前に踏み出すと、ジロジロと舐めるように私を見始めた。下心のようなものは感じない。彼の瞳には単純に不可思議な生き物を調べているという様子が見て取れる。
そして私をひとしきり観察したあと、竜王は腕を組みニヤリと笑った。
「ふむ。さてはおまえ、迷い人か?」
「ま、迷い人……?」
私はそのまったく聞き覚えのない言葉に、思わず首をかしげた。