竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

14 理想のお妃様とは

 
 竜王様がコツコツと靴音を鳴らし、堂々とした態度でこちらに向かって歩いてくる。さっき私が見た子供っぽい表情は影を潜め、王族としての顔つきに戻っていた。私への親しみをもった表情も、今はもうない。どうしていいかわからない私は、ただじっと竜王様を見つめている。


 しかしふと隣を見ると、アビゲイル様が立ち上がり、頭を下げているのが目に入った。


(しまった! 私も竜王様に頭を下げて、お迎えしなきゃいけないんだ!)


 文化が違うとはいえ、私が竜王様に礼を尽くさない態度はイメージが良くない。あわてて私も同じようにしようと立ち上がったが、竜王様が静止するように手を上げた。


「リコはそのままで良い。アビゲイル嬢も頭を上げて、座るといい」
「はい。ありがとうございます」


 顔を上げたアビゲイル様は、気品のあるほほ笑みで竜王様と目を合わせ、お礼を言った。リディアさんが新しいお茶を淹れている。どうやら竜王様もここに座るみたいだ。
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