竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


「あっ……」


 竜王様と目が合ったような気がした。こちらをじっと見つめ、目だけを細め笑っている。しかしそれは一瞬で、私の勘違いだったかもしれない。今はもうシリルさんと何かを話していて、こっちを見ていない。それなのに私は一気に耳まで熱くなって、妙に居心地が悪かった。


「では最初の競技を始める! 両者、前へ!」


 その始まりの声にハッとわれに返り、あわてて競技場に視線をうつした。


(とりあえずこんな珍しい競技なんだから、しっかり見ておかないと!)


 最初の競技は、竜の力比べだ。いわゆる綱引きで、騎士を背中に乗せて一本の綱を口で引っ張り合っている。この競技は若手騎士のお披露目らしく、彼らの気合いもすごかった。
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