竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「アビゲ……」
しかし彼女の顔にいつもの優しい表情はなく、凍ったような冷たい瞳で、競技場の竜を見ている。
(どうしたのだろう? この世界の人たちは、竜が好きなのよね?)
見ているのは竜じゃなくて、騎士だろうか? いや、そもそも体調が悪いだけなのかもしれない。そう思った私は、そっと顔をのぞき込み、アビゲイル様に話しかけた。
「……アビゲイル様? どこか具合が悪いのですか?」
「え? いいえ、そんなことはありませんわ」
アビゲイル様は、にっこりとほほ笑んでいる。まるでずっとそうしていたかのように、自然な表情だ。すると彼女は頬に手を当て「もしかしたら……」と思いついた原因を話し始めた。