竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
たくさんの人の叫び声が聞こえると同時に、私の体がぐるんと回った。うつぶせの状態になり、自分がどれだけ高い場所にいるのかがわかると、カタカタと歯が震え始める。
下を見ると、興奮した竜たちが私をギロリと睨みつけていた。あれは獲物を見つけたという目だ。私と目が合うと、勢いよく後ろ足を蹴って、飛び立った。パックリと大きく口が開けられ、私に噛みつこうと、すごい早さでこちらに向かってきている。
『ママ! ママ! どうしたの!』
その竜王の卵の叫び声に、ハッとする。彼はどういう状況かわからず、ただひたすら私を呼んでいた。
(そうだ。私は一人じゃない。私が死んだらこの子はどうなるの?)
それでも恐怖で口がまったく動かない。私は心の中でせいいっぱい叫んだ。
(竜王様! 助けて!)
「リコ!」
竜王様の声が聞こえた気がした。しかし次の瞬間、私の体は糸が切れたように、暴れ狂う竜の口めがけて落ちていった。