竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


 それでもあの夜、リコの部屋に行って良かった。彼女は俺が思っている以上につらい状況で育ち、自立しようともがいていたのだ。


 リコは自分から「つらい」だとか「悲しい」だとかは言わないのだろう。きっと言っても無駄だからだ。叶わない願いなら口に出すのは、虚しいものだ。


(俺も経験があるからわかる……)


 そんなことに思いをはせていると、無意識に子供の頃の景色が頭に浮かんでくる。これ以上考えていると、疲れるだけだな。俺は食事を終えると、用意されたばかりの「リュディカ」をひと口飲んだ。


「竜王様、リコで思い出しましたが、彼女が妾になったという噂の出どころがわかりました」
「ほう、早かったな」

「ええ、以前リディアの報告にあった、リコに嫌がらせをしたギーク・ロイブという騎士と、その妹のライラ・ロイブ嬢です」
「はあ……リコへの嫌がらせか」
「そのようですね。兄のギークは前回のことで、本日の競技会の出場選手から外されたそうですし」

< 181 / 394 >

この作品をシェア

pagetop