竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「問答無用で殺せばいい」
そう言って笑う美しい顔はまるで映画のワンシーンのようで、私は目をそらすこともできず、ただただ呆然と立ち尽くしていた。
「ふっ……その顔はなんだ。おかしな顔をしおって」
竜王は私の寄り目になった顔を笑うと、突きつけていた剣をしまった。「その剣が原因で私の顔が変になったんですけど?」と言いたいところだけど、言えるはずがない。それに今はそんなことより、私が迷い人(仮)で、ものすごく期待されているということを考えなくては!
(どうしよう! 迷い人にそんな責任があったとは! 私はただのフリーターだよ! なんの特技もない、保育の仕事につけるよう勉強してるだけの凡人。そんな二十歳になったばかりの小娘の私が、この国に何か影響を与えられるとは思えないよ!)
それでも私がこのまま何もしなかったら、殺されてしまうのだ。竜王に殺られるか、はたまた背後の怖い女性達に殺られるか……。そんな絶望で頭を抱えていると、竜王は不思議そうに私の顔をのぞき込んでいた。