竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
頑丈な竜舎が半壊している場所に駆け寄ると、二頭の竜がピッタリとくっつき座っていた。しかし様子がおかしい。そこにいるのはたしかにリコを連れ去った竜だが、さっきまでの狂った様子はなく、穏やかな顔つきをしている。もう一頭の竜はこの正気を失っていたヤツを、止めていた竜だ。
(こいつらがリコを連れ去ったんじゃないのか?)
二頭は俺が竜王だとわかっているのだろう。ビクビクとこちらを窺うように見ては、何かを隠すように隙間なくくっついている。
すると二頭の竜の間から、もぞもぞと何かが動くのが見えた。布だ。ただの布ではない。リコが着ていたブルーのドレスの端が隙間からひらりと姿を現した。
「リコ!」
その光景にまた自分の理性が吹き飛びそうになる。ぐらぐらと油が沸騰するような熱い欲望が、竜を殺してでもリコを取り戻せと叫んでいた。