竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「殺してやる……!」
俺は二頭の竜の頭に向かって腕を伸ばし、大量の竜気を手に込め始める。
しかし俺は竜王で、竜は同胞と言っても過言じゃないほど、この国で大切にされている。竜を殺してはいけない。竜殺しは、この国で人殺しと同じくらい重罪なのだ。それはたとえ王族だろうと同じことだった。なにより自分自身の竜を大切に想う気持ちが、俺の伸ばした手を止めた。その時だった。
「きゃあ! 待って待って! あははは! くすぐったいから、舐めないで〜!」
緊迫した場にまったくふさわしくない呑気なリコの声が、耳に飛び込んできた。
リコが生きている! しかも大きな怪我はないようで、彼女の元気な声がボロボロの竜舎に響き渡っていた。
「リコ! リコなのか!」
「えっ? この声は竜王様? 本物? あれ……? そういえば私、何してたんだっけ……? それに、ここどこ?」