竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
私のその返事に、リディアさんは口元を押さえ、無言で頭を横に振っている。私も怖かったけど、あの事件はリディアさんにとっても、そうとう怖かったと思う。青ざめた顔で必死に私に手を伸ばす彼女の姿を思い出し、私はぎゅっとリディアさんを抱きしめた。
すると「コラ!」と何かを叱る声と、ドタドタと私の近くに駆け寄って来る足音がした。
『ねえねえ、君のことは、僕が助けたんだけど〜』
その声に驚いて振り返ると、さっき私にプロポーズした竜がニコニコしながら話しかけてきた。
「えっ? そうなの?」
『そうだよ。落ちてきて危なかったから、俺が口でキャッチしたんだ!』
いきなり話しかけられたことにも驚いたけど、その内容にはもっとビックリだ。この竜に食べられると思って記憶が途切れたから、あとのことは覚えていない。竜王様やリディアさんたちもこの竜が私を助けたことを知らなかったのか、驚いた顔をしている。