竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
以前、彼に「私の中から出ていくことはできないの?」と聞いたことがあった。あの時卵くんは『しらない! ぼく、わかんない!』と言っていたけど、あの様子は事情を知っているみたいだった。
そしてその答えはきっと、「出ていける」のだろう。
もしかしたら母体である私は、試されていたのかもしれない。母親として覚悟があるのか、竜王の卵を大切にできるのか。それならばきっと、私は不合格だ。卵くんに私を勧めた神様だって、認めてはくれないだろう。
覚悟もない。敵を作って殺されそうになる。卵くんの存在を否定するように、違う母体を勧める私なんて、見限られてもしょうがないのだ。
それでもあの時。空中から落とされそうになったあの瞬間。
私はお腹の卵くんと離れたくないって、心の奥で思っていた。
「今さら遅いよね……」