竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「え、えっと……」
遠くで竜王様のククッと笑う声が聞こえる。もう! 絶対に面白がってるんだから! 私は顔を真っ赤にしながら、一人一人の肩に手を置いていった。
「わ、私を守る盾となりなさい……」
「はっ!」
少し尻すぼみな私の言葉でも、騎士さんたちは大満足なようだ。スッキリした顔で竜舎のほうに帰って行った。最後にヒューゴくんに挨拶すると、照れくさそうに「今日はありがとうございます」と言って飛んでいく。でもやっぱりしっぽはブンブン振っているので、喜んでいるらしい。
「なんだなんだ、もうリコは立派な迷い人様だな」
ニヤニヤとからかうような事を言いながら、竜王様がこっちに近づいてくる。手には何か赤い実がついた枝を持っていた。なんだろう? すると竜王様は、枝から一つだけ木の実を取ると、私のほうに差し出した。
「リコ、これを」
「なんですか?」
私の手のひらに、赤い木の実がコロンと転がった。