竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
控えめな態度でお礼を言っているけど、しっぽは土埃が立つほど、バチンバチンと揺れている。ゲホゲホと被害にあった人たちが咳き込みながらも、みんな微笑ましく私たちを見守ってくれていた。
「そろそろ、行くぞ」
「はい!」
『ぼくも行く〜』
竜王様にエスコートされ、用意されていた竜車に乗り込む。しかしなぜかシリルさんだけが一緒に乗らず、ニコニコと私に手を振っていた。
「あれ? シリルさんは行かないのですか?」
「はい。私は少し調べ物がありまして」
「……シリル、頼んだぞ」
「はい、承知しております」
一転して二人の雰囲気が険しいものになり、調べ物が重要な案件だとわかった。
(たぶん私を襲ったギーク兄妹のことだろうな。今は聞かないでおこう)