竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
竜人の体は大きい。そのうえ竜王様は身長も高く、肩幅も広いのだ。だから王族専用のこの竜車も、もちろん広々サイズなのだが……。竜王様は私にピッタリくっついて、なおかつ顔を私のほうに向けるから、ものすごく居心地が悪い。
嫌悪感からじゃない。なんていうか、今隣りにいる竜王様からは、妙にしっとりとした空気が流れてきている。私の勘違いじゃなければ、口説きモードというか……。からかうようなニヤニヤした笑いはどこかにいって、私を見つめる瞳は潤んでいた。
「リコは髪の毛も綺麗だな」
「ひえっ!」
スルリと髪の毛を一房手に取られ、竜王様がそれにキスをした。まるで少女漫画の恋人のような甘い行動に、甲高いまぬけな声が飛び出してしまう。
「竜王様、もうそのへんで」
「ああ。わかった、わかった」
「竜王様はお茶を飲んでください」
「シリルが用意したのか?」