竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
05 やっぱりここは異世界
「すまないリディア、リコ様のお支度はもう済んでいたか?」
「はい、ちょうど終わったところです」
シリルさんが申し訳なさそうに、こちらに声をかけてきた。実際にちょうどヘアセットまで終わったところで、鏡の中の私はおとぎ話に出てくるお姫様の姿だ。
(すてき……!)
さっきまでの私はドレスを嫌がってはいたけれど、それはあくまで周囲の人とのトラブルを避けるためだ。子供の頃からプリンセスが出てくる物語が大好きだったので、いざ着てみるとワクワクが止まらない。
(だってこんな素敵なドレスが着れるのも、今日くらいだもん。明日からはリディアさんみたいにエプロンを着て働かなくちゃ!)
私はドレスのスカートをほんの少しつまんで、左右にゆらゆらと揺らした。裾の刺繍は金糸と銀糸が使われていて、布が波打つたびにキラキラと光っている。
「けっこう似合ってるじゃないか」
「きゃっ!」
その声に振り返ると、竜王が衝立の影から姿を現した。どうやら私が夢中でドレスを翻しているところを黙って見ていたようで、面白がるようにニヤニヤと笑っている。