竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「あっちでは、こういったドレスは着ないのか?」
そう言って近づいてきた竜王は、昨日と違って黒の軍服姿だった。肩にかけているマントの裏地は赤で、きっとこれは彼しか身に着けられないのだろう。昨日はどちらかというと豪華な民族衣装で砂漠の王様といった雰囲気だったけど、今日の彼はまるでおとぎ話の王子様。その圧倒されそうな美しさに胸が高鳴り緊張したけど、見えないように深呼吸をして心を落ち着かせた。
「に、日常的にはドレスは着ません。こういうのを着るのは、自分の結婚式くらいでしょうか……」
「ほう、おもしろいな。まあ、こちらの服装を気に入ったようで良かった」
「あっ……でもこれは――」
「ほら、いくぞ」
「今日だけですから!」と説明しようとするも、それを遮るように竜王の手が私の前に差し出された。これはもしかして、エスコート? ちらりと竜王の顔をのぞき込むと、私が手を出さないので不思議そうに首をかしげている。
「ああ、そうか。こういう文化もないのだな」
「知ってはいるのですが、日常的にやったことがなくて……」