竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「しかし竜は頑丈ですからね。落としたくらいでは死にません。ですが、子どもの竜はまだ食べ物を得ることができませんから、最終的には餓死してしまうことがほとんどです」
「それでルシアンさんが、森に落ちていた竜の子を、助けてあげたんですか?」
私の言葉にルシアンさんが足を止め、振り返る。暗い表情で私を見つめると、ゆっくりと顔を横に振って否定した。
「拾いはしましたが、今のところ、助けてあげることはできていません。食べ物も水も、何も受け付けないので」
「えっ? 水も? きゃっ!」
「リコ!」
話に夢中だったせいで、階段を踏み外してしまった。石で作られているせいか、手を少し擦りむいて、うっすら血が滲んでいる。
「リコ! 大丈夫か?」
「大丈夫です。すみません、足元を見てなくて……」
「階段は暗いからな、気をつけろ」
「この階段を登れば、竜のいる階につきますので」
ルシアンさんの指差すほうを見ると、たしかにもう少しで階段が終わるところだった。みんな心配そうに私を見てるから、恥ずかしい。私はみんなの気をそらすために、ルシアンさんに質問をした。