竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「でもお腹が空いてるはずなのに、その竜はなぜ食べないのですか?」
最後の一段を登ると、ようやく竜がいる三階についた。拾った竜はこの階の奥にいるらしく、ルシアンさんはズンズンと、廊下を進んでいく。
「人に飼われている竜が出産する時は、すぐに人の手が入ります。すると幼竜も人の竜気を嫌がりません。ですから食事を与えることができるのですが、野生の竜は人の竜気が苦手なので、たとえ餌を与えても食べないんです」
「竜気の弱い平民でも無理か?」
それまで黙って聞いていた竜王様が、ルシアンさんに疑問を投げかけた。
「はい、ここに通いで働いてくれる平民の女性がいますが、無理でした。微量な竜気も敏感に察し、危険だと感じているようですね」
「そうか……」
「こちらの部屋です」
鍵を開け部屋に入ると、そこは立派な客室だった。部屋のすみに椅子があり、その下に幼竜が身を隠すように座っている。大きさは両手で持ち上げられるくらいで、いきなり入ってきた私たちに気づくと、ガタガタと震え始めた。