竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「この子が……」
「はい、そうです。しかしここまで怖がるのは……、ああ、竜王様の気が怖いのでしょう。申し訳ないのですが、竜王様は少し離れてもらえますか?」
「む……、そうか、しかたがない」
竜王様が部屋の扉のところまで下がると、幼竜の震えも少し小さくなった。
「あの、今回の依頼は、私がこの子と話すということですけど、何を話せばいいのでしょう?」
「ああ、そうでしたね。しかしこちらから頼んでおいて申し訳ないのですが、迷い人様も話すことはできないと思います」
竜王様が言っていたことと同じだ。野生の竜だから無理だということなのかな? するとルシアンさんの口からは、予想とは違う答えが返ってきた。
「この子はまだ幼竜です。ですから竜同士の言葉も、理解しておりません」
「えっ! そうなんですか?」
竜なら生まれてすぐに、話せるのかと思っていた。卵くんが魂の状態でベラベラと話すから、なんとなくそう思っていたけど違うらしい。私が驚いた顔をしていると、ルシアンさんも眉を上げて、不思議そうにこっちを見ていた。