竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


「迷い人様がいた世界では、赤子でも人の言葉をすぐに話すのですか?」
「あっ! そういうことなんですね。それなら私の世界でも同じで、しっかり言葉を話すまでには三年ほどかかります」


(う〜ん、それなら卵くんは次の竜王だから、特別ってこと? もしくは魂だから、私が感じ取ってるの?)


 卵の経験者である竜王さまが後ろにいるのだから、聞いてみようかな? この話題なら今質問しても、変に思われないだろう。私は竜王様のほうを振り返ると、なるべく自然な感じで質問をした。


「竜王様が赤ちゃんの頃も、話せなかったのですか? 以前リディアさんから竜王の卵について聞いた時は、お腹から母親に話しかけると聞いたのですが……」


 すると私の質問を聞いた竜王様の顔が、一瞬にして険しい表情になった。眉間にしわを寄せ、私と視線を合わせようとしない。心なしか、その場にいたルシアンさんやリディアさんの表情も暗くなっている気がする。


「……竜王でも赤子の時は話せないな。卵の時のことも覚えていない。この幼竜と同じだ」


 絞り出すようなその声に、私はふれていはいけない部分に無断で入ったことに気づいた。

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