竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
(この空気で謝るのは変だし、どうしよう……)
私の質問のせいで、まわりもピリついた雰囲気になってしまった。竜王様はまた穏やかな笑みを浮かべ始めたけど、私は申し訳無さが先に立って、話が続けられない。すると突然、手のひらに、生温かい湿った何かがふれた。
「きゃあ! あはははは! くすぐったい! なに?」
「リコ! どうした?」
驚いて手を見ると、なんとそこには幼竜が私の手をペロペロと舐める姿があった。正確に言うと、さっきコケた時の擦り傷を舐めている。
『んん……あま〜い!』
「あっ! しゃべってますよ! この子、しゃべってます!」
「なに!」
「迷い人様! それは本当ですか?」
気づくと私は竜王様に庇われるように、後ろから抱きしめられていた。それでも伸ばした手には、しっぽを振りながらこっちを見る幼竜が、ちょこんと座っている。