竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「あなた、しゃべれるの?」
『ちょとだけ』
「うわあ……かわいい! 名前はあるの?」
『クルル』
「クルルくんか」
「迷い人様、もしかして今の会話は、この竜がクルルを自分の名前だと言ったのですか?」
メモをしながら私とクルルくんを観察していたルシアンさんが、急に会話に入ってきた。
「はい、そうですけど、どうかしましたか?」
「その名前は、私がつけたんです。クルルと鳴くので、仮の名前だったのですが……」
「気に入っちゃったみたいですね」
本人が自分の名前だというのだから、今から変えることはしなくてもいいだろう。私がクルルくんの喉元をカリカリと撫でると、ルシアンさんが言っていたように、「クルル」と鳴いた。
「それにしても血か……そういえば、俺も最初、リコの血を甘い匂いだと感じたな」
「迷い人様の血には、竜王様の癒やしのように、何か竜にだけ効果がありそうですね」
私がクルルくんを抱っこしながら、傷を舐めて甘いと言われたことを話すと、竜王様たちが納得した顔で話し合いを始めた。