竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
プリンセス好きな私にとって、ドレスを着てエスコートされるだなんて、妄想の中の世界だ。しかも一国の王様とだなんて、恥ずかしくて想像すらできなかった。それなのに目の前には竜王がいて、私に手を差し伸べている。
「ほら、こうして俺の手の上に、自分の手を置くんだ」
するとモジモジしている私を見かねた竜王が、サッと手をつかんだ。そしてそのままお互いの手が重ねると、「さ、行くぞ」と言って歩き始める。
(今日だけ、今日だけ楽しもう……)
まるで自分が映画の中に入り込んでしまったようで、耳まで熱くなってくる。収まったはずの胸の鼓動も早鐘のように鳴り始めどうすることもできない。
そのうえドレス姿で歩くのに慣れていなくて、よろめいてしまった。やっぱり理想と現実は違う。そんな足元がおぼつかない私を見て竜王は楽しそうに笑っているけど、私は結局席に着く短い間で顔が真っ赤になってしまった。
「よくお似合いですよ」
シリルさんが優しく声をかけてくれたけど、さっきまでのヨボヨボエスコートのせいで、苦笑いしかできない。リディアさんも私たちを見て満足そうにほほ笑みながら、お茶を注いでいる。