竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「飲んでみろ。この国でしか採れない、リュディカという貴重なお茶だ」
「は、はい!」
どうも竜王に命令されると、元気よく返事をしてしまう。彼もそんな私の態度が面白いようで、口の端を上げていた。私ったら、せっかく素敵なドレスを着ているのに。しかも今日限定。深呼吸をし気を取り直すと、私は豪華なドレスにふさわしい優雅さで、お茶をこくりと飲んだ。
「美味しい……! すごく美味しいです! それにほんのり甘くて。これはお砂糖が入っているのですか?」
そのお茶は味わいは紅茶に似ているけど、色は透き通った黄金色だった。後味はスッキリしているけど、どこかほうじ茶のような香ばしさもあって、とても美味しい。
(お砂糖を入れたベタっとした甘さでもないし、蜂蜜のような癖のある感じでもないわ。ドライフルーツを入れてる? でも果物の香りはしないし……)
今まで飲んだことがないお茶の味について真剣に考えていると、竜王は私の反応に満足したのか、嬉しそうに笑っている。
「いや砂糖も蜜も入れていない。もともとこのお茶の葉が甘いんだ。緊張をほぐす効果があるから、今日から寝る前にでも飲むといい。リディア、リコが気に入ったようだから今日から用意してやれ」
「かしこまりました」
(え? ちょ、ちょっと待って。これ貴重なお茶だって言わなかった? どうしよう。お茶は美味しいけど、特別扱いは怖い!)