竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「竜王様、そのような戯言はお止めください。代々、妃に選ばれる者は高位貴族だけです。人数を集めるだけ、こちらの仕事が増えてしまいますよ」
まるで聞き分けのない子どもをなだめるような侯爵の話し方に、鳥肌が立ちそうな気持ちになる。しかし竜王様は眉一つ動かさず、侯爵をじっと見ていた。
「前例がないからといって、今回も同じだとはわからないだろう。そうだ、リコ。おまえも明日、選定の儀を見に来るか?」
「えっ! わ、私ですか!」
突然竜王様が私のほうを振り返り、周囲の注目が一気に私に集まった。さっきまで竜王様に媚びるように笑っていたリプソン侯爵は、私のことをじっと睨みつけ鼻で笑う。
「竜王様! お戯れが過ぎます! いくら迷い人様とはいえ、選定の儀は神聖なもの。それに貴族令嬢たちも緊張して選定に挑むのです。気軽に遊びに誘うようなこと、してはなりません」
そう言うと、リプソン侯爵は私の前にひざまずいた。