竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
「迷い人様、初めてお目にかかります。わたくし、リプソンと申します。先日は娘のアビゲイルと親しくしていただけたようで、感謝申し上げます」
侯爵の突然の変わりように、思わず一歩下がってしまう。それを見越していたのか、いつの間にか後ろに回っていた竜王様が私の肩を抱き寄せた。
「優しくしてもらったのは、私のほうですので、こちらこそありがとうございます……」
リプソン侯爵は私の返事に感激したように、胸に手を当てる。しかし顔をあげた侯爵の瞳が私と竜王様の姿を捉えたとたん、ほんの少し唇を歪めた。しかしそれは一瞬で消え、今はまた大げさな身ぶり手ぶりで、話を続けている。
「なんとお優しい! それならば明日の選定の儀が、どれだけこの国の令嬢たちにとって大事な日か、すでにおわかりでしょう? 竜王様の冗談をお断りするのは難しいとは思いますが、明日だけは同行をお控えいただけると嬉しいのです」
そう言うと、まるで神に祈るような姿で、また頭を下げる。こんな皆が見ている前でひざまずいて言われたら、返事は一つしかないだろう。