竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


(足が動いた!)


 ようやく固まっていた足が動き出し、私はリプソン侯爵を乱暴に突き飛ばす。


「さわらないで!」
「リコ!」


 気づけば私はリディアさんの制止も聞かず、部屋を飛び出していた。


「はあ、はあ……!」


 もうどこをどう走ったのかわからない。階段をのぼり、自分の部屋とは正反対のところに行こうと、闇雲に走っている。どのくらい走っただろうか。いつの間にか私はどこかの庭の、小さな小屋の前に座り込んでいた。


「最悪……!」


 あれでは私が竜王様に恋をしていると、一目瞭然だ。目立たず地味に生きたいだなんて思っていたのに、一番注目されている時に、あんな目立つことをしてしまった。


(でも私には二人の子どもの乳母は、できそうにないよ。妄想でもいいから、卵くんにまた会いたい……)

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